ジャンルコードと分類法・3


前回,ジャンルコードは十進分類法と似ているけれど,細かいところで違うと言った。ではどういうところが似ていて違うのか。


まず十進分類法というのはどういうものなのかというと,端的にいえば「0-9の数字だけを用いてあらゆる主題を階層的に表現する分類法」という感じ。具体的にいうと,だいたい以下のような形式で分類されている。

  1. まず,この世のありとあらゆる本があるとする。
  2. これらの本を,大きなまとまり毎に9つに分け,それぞれに1から9までの番号をつける。
  3. 分けきれなかったものをまとめて,0の番号をつける。
  4. 0から9の10の各まとまりに対して,同じ作業を繰り返す。1のまとまりを9個に割った中で1の番号をつけられたまとまりを11*1と表す。ほかも同じ。
  5. 10のまとまりをさらに10に割った100のまとまりに対して,同じ作業を繰り返す。
  6. 同上。各まとまりに対し,必要なだけ同じ作業を繰り返す。

この分類法は,構造上いくつかの問題点はあるものの*2数字のみで表現できること,それでもほとんどの主題が網羅的に扱えること,主題が一意に整列できること*3といった利点があり,第一号であるDDC*4や,その国際向けの改良版であるUDC*5など,世界中でけっこうなところがこれを使っている。*6日本ではもちろんNDCがこれで,公共図書館を中心にほとんどの図書館でこれを使っている*7


まあ多分,十進分類法についてはこのへんとかこのへんとかを見てもらった方がわかりやすいと思います(ぉ


これをふまえて,C59(3桁化直前)のジャンルコードと NDCの第2次区分表とを比較してみると,似てる点がわかりやすい。


F59ジャンルコードNDC 9版の第2次区分表

  • [1 創作]
    • 10 創作(少年)
    • 11 創作(少女)
    • 12 創作(JUNE)
    • 15 学漫
    • 16 評論・情報
  • [2 男性向ほか]
    • 20 創作・アニメ・ゲーム(男性向)
    • 21 アニメ(少女)
    • 28 ギャルゲー(PC)
    • 29 ギャルゲー(CS)
  • [3・4 ゲーム]
    • 32 ゲーム(格闘)
    • 33  SNK(格闘)
    • 34 同人ソフト
    • 35 ゲーム(電源不要&オンライン)
    • 38 ゲーム(その他)
    • 47 ゲーム(RPG)
    • 48  スクウェア&アトラス
    • 49 ゲーム(育成)
  • [5 アニメ,人気作品(まんが)]
    • 52 ワンピース
    • 53 SLAM DUNK
    • 54 アニメ(少年)
    • 55 アニメ(その他)
    • 57  ガンダム 
  • [6 歴史・SF・特撮・メカミリ]
    • 60 歴史
    • 63 創作(文芸・小説)
    • 67 SF・ファンタジー
    • 68 特撮
    • 69 鉄道・メカミリ
  • [7 音楽・芸能・スポーツ]
    • 71 音楽(洋楽・邦楽)
    • 72 音楽(男性アイドル)
    • 73 TV・映画・芸能
    • 75 スポーツ
  • [8 小説・まんがFC]
    • 80 FC(小説)
    • 82 FC(少女)
    • 83 FC(青年)
    • 84 FC(少年)
    • 87 FC(ジャンプ)
    • 88  冨樫義博
    • 89  封神演義
  • [9 その他]
    • 90 その他

  • 0 総記
    • 00 総記
    • 01  図書館.図書館学
    • 02  図書.書誌学(中略)
  • 1 哲学
    • 10 哲学
    • 11  哲学各論
    • 12  東洋思想(中略)
    • 16 宗教
    • 17  神道(中略)
  • 2 歴史
    • 20 歴史
    • 21  日本史
    • 22  アジア史.東洋史(中略)
    • 29 地理.地誌.紀行
  • 3 社会科学
    • 30 社会科学
    • 31  政治  
    • 32  法律(中略)
  • 4 自然科学
    • 40 自然科学
    • 41  数学
    • 42  物理学(中略)
    • 49 医学.薬学
  • 5 技術
    • 50 技術.工学
    • 51  建設工学.土木工学
    • 52  建築学(中略)
    • 59 家政学.生活科学
  • 6 産業
    • 60 産業
    • 61  農業
    • 62  園芸(中略)
  • 7 芸術
    • 70 芸術.美術
    • 71  彫刻
    • 72  絵画.書道(中略)
    • 78 スポーツ.体育
    • 79 諸芸.娯楽
  • 8 言語
    • 80 言語
    • 81  日本語(中略)
  • 9 文学
    • 90 文学
    • 91  日本文学(中略)

*8


ジャンルコードの[]で囲んだ部分はいま書き加えたものだけど,わりあいどういうふうに整理されてたかは見えると思う。つまり,各ジャンルコードの一番前の数字が,より上位のカテゴリを表しているという構造。*9
ジャンルコードの場合,0類*10はなし*11で,その代わりに9類を「その他」においているというのが面白い。またNDCでは10・20などの綱は各類における総記的なものをあてているが,ジャンルコードでは「10 創作(少年)」や「60 歴史」などのように,特にそうしたものはあてていない。また2類と5類がかなり複雑になってることも少しに気になる。
もっともそうした細かい点を考えなければ,ジャンルコードに十進分類的な発想(数字のみで主題の階層性を表す)のあるのが感じられる。


そもそもジャンルにコード番号をふったC33からその傾向はあり,たとえば創作は0,まんがFCは3,アニメは5,文芸は6というような区分ができている。空いた番号をつめずにのちのちの拡張に備えたということなのだろうけれど,それとともに図書館の分類などが念頭にあったのではないだろうか。


以上のように,コミケのジャンルコードは図書館で使用している十進分類法によく似ており,多少の改良で十分使用に耐える同人誌図書館用の分類法が作れる。たとえば上記のC59の時代に考案していたのなら,「21 アニメ(少女)」の移動,3-4類の合併・整理,5類のジャンプ作品を87の下に移動,などの整理で比較的わかりやすい構造になっただろう。


しかし,である。C59からC60への変更(3桁化)を見てもらいたい。

  F59ジャンル     F60ジャンル
10 創作(少年) 100 創作(少年)
11 創作(少女) 101 創作(少女)
12 創作(JUNE) 102 創作(JUNE)
15 学漫 105 学漫
16 評論・情報 106 評論・情報
20 創作・アニメ・ゲーム(男性向)   200 創作・アニメ・ゲーム(男性向)
21 アニメ(少女) →501    
    34→ 204 同人ソフト  
    207 Leaf & Key
28 ギャルゲー(PC) 208 ギャルゲー(PC) (初出がパソコン)
29 ギャルゲー(CS) 209 ギャルゲー(CS)
32 ゲーム(格闘) 302 ゲーム(格闘)  
33 SNK(格闘) ×    
34 同人ソフト →204    
35 ゲーム(電源不要&オンライン) 305 ゲーム(電源不要&オンライン)
38 ゲーム(その他) 308 ゲーム(その他)  
47 ゲーム(RPG) 317 ゲーム(RPG)  
48 スクウェア&アトラス 318 スクウェア& アトラス(RPG)
49 ゲーム(育成) ×    
    319 ゲーム(恋愛)
    87→ 400 FC(ジャンプ)
    53→ 410 SLAM DUNK
    88→ 411 冨樫義博
    89→ 412 封神演義
    52→ 413 ワンピース
    414 NARUTO
    21→ 501 アニメ(少女)  
52 ワンピース →413    
53 SLAM DUNK →410    
54 アニメ(少年) ×    
55 アニメ(その他) 505 アニメ(その他)  
    506 アニメ(サンライズ
57 ガンダム  517 ガンダム 
60 歴史 600 歴史
63 創作(文芸・小説) 603 創作(文芸・小説)
67 SF・ファンタジー 607 SF・ファンタジー
68 特撮 608 特撮(その他)
69 鉄道・メカミリ 609 鉄道・旅行・メカミリ
71 音楽(洋楽・邦楽) 701 音楽(洋楽・邦楽)
72 音楽(男性アイドル) 702 音楽(男性アイドル)
73 TV・映画・芸能 703 TV・映画・芸能  
    704 特撮(補足参照)  
75 スポーツ 705 スポーツ
80 FC(小説) 800 FC(小説)
    810 FC(少年)  
82 FC(少女) 811 FC(少女)
83 FC(青年) 812 FC(青年)  
84 FC(少年) →810    
    813 FC(コロコロ)
    814 FC(ガンガン)
87 FC(ジャンプ) →400    
88 冨樫義博 →411    
89 封神演義 →412    
90 その他 900 その他


「アニメ(少女)」の移動,3-4類の合併・整理,ジャンプ作品を整理,という部分がされたのはよしとしよう*12。3桁化のおかげで新ジャンルも多数増え,今後の拡張にも余裕がある。それはいい。


ただ,なんで「11」が「110」でなく「101」になるのかorz


まあ,本当に十進分類を念頭においてコードを作ってるわけではないんだろうから不思議じゃないのだけれど,たとえば自分がまんがFCのあたりを整理するとしたら,

  • 410 FC(少年)
  • 411  FC(コロコロ)
  • 412  FC(ガンガン)
  • 420 FC(少女)
  • 430 FC(青年)
  • 450 FC(ジャンプ)
  • 451  SLAM DUNK
  • 452  冨樫義博
  • 453  封神演義
  • 454  ワンピース
  • 455  NARUTO


みたいな感じにする気がする。まあ,何のジャンルが爆発的に人気が出るかわからない昨今,4-5-1と三段構成にするよりは8-01と二段構成にした方が柔軟なのかもしれないけれど。
3桁化以前のぐちゃぐちゃなジャンルコード構成(とりあえず空いたところに新ジャンルを詰める,みたいな)を眺めていると,むしろもう少し骨組みを作っておいた方が,あとあと便利なんじゃないかなあ。


まあ結局のところ,ジャンルコードは図書館の分類法とは似ているけれど,基本的に別物ですよ,ということかと。
ただ「似ている」という点はポイント。前回書いたとおり,ジャンルコード“風”の分類は,管理上も利用上も利点が多いはず。もし同人誌図書館をつくるのなら,その最良の分類法は,現行のコミケのジャンルコードをいじった十進分類法とするのが,やはり最良なのでしょうね。


というわけで,実はすでにジャンルコードを基本とした十進分類法を制作中だったり。
たぶん次回で公開できるはず。

*1:イチイチと読む。ジュウイチではない

*2:たとえば,まとまりをまたぐような新しい主題に対応できないとか。例えば,インターネットやコンピュータまわり。

*3:まあ数字列ですから。ちなみにこの場合,213.6 とかは 0.2136だと思った方がわかりやすい。100は0.1ですね。

*4:デューイ十進分類法。1876年にアメリカでデューイが発案。三上先生が「デューイの分類」と言ってるのがこれ。英米および英語圏の多くの公共図書館で使われている

*5:国際十進分類法。1895年にフランスで発案。東欧あたりでの利用が多い様子。十進分類法のわりに主題合成型の性格も持っている不思議な奴。

*6:まあ,英語圏以外だと独自分類もってるところの方が多そうな予感。

*7:日本ではNDC以外だと,医学系の大学でLC+NLMCを使ってるのがあるほかは,NDLCやUDCを使ってる館が少しと,その他の独自分類をもってるところがいくつかあるぐらいだと思う。CCやBC使ってる館とかって国内にあるんだろうか?

*8:[]で囲んだ部分は書き加えたもの。また一部字下げを加えている

*9:例外は多々ありますが

*10:十進分類法の場合,一番前は類,二番目を綱,三番目を目というらしい。これを書くために勉強して知りました(マテ

*11:C33-35まではあったがC36の更新以降なし

*12:ジャンプ作品と他のまんがFCが分裂したのは気になるが