カレントアウェアネスのコミケ記事の件。


今日はあまりネットを見ていなかったので,寝る前にちょっとチェックを,常用してるiGoogleを見てるとこんな記事が目に飛び込む。


CA1672 - マンガ同人誌の保存と利活用に向けて -コミックマーケットの事例から- / 里見直紀,安田かほる,筆谷芳行,市川孝一 | カレントアウェアネス・ポータル


ええ? あれ? カレントアウェアネスで同人誌にコミックマーケット? それも執筆は里見氏にコミックマーケット準備会の代表方??
と戸惑いつつも読んでいくと,


現在の同人誌とその保存状況についての概略,コミケのこれまでの取り組みが出てきて,
さらにはこれまであまり表に出てなかった見本誌倉庫の内部写真や収蔵量(ゆうパック単位),これまでに調べてた見本誌の回収基準まで登場。

初期においては、コミケットで集めた見本誌は、コミケットの事務所に併設している書架に収めていたが、コミケットの規模の拡大とともに収容が不可能となり、1987年頃に千葉県に見本誌保存用のプレハブの倉庫を建設した。その後、プレハブ倉庫の増築を行ったが、増え続ける見本誌の収容が追いつかず、また、保存状態にも問題が発生したため、2003年に埼玉県に鉄筋コンクリート製の倉庫を取得した。現在は、全ての見本誌をそこに収納している(図1参照)。

現在、回収の対象としているのは、それまでのコミケットに見本誌として提出していない、a) 同人誌(コピー誌を含む)、b) カレンダー、c) カードゲーム(b、cはいずれも画集に準じるものとして扱っている)、d) メディア類(ビデオテープ、カセットテープ、フロッピーディスク、MO、CD、DVD等)、e) 量産されたフィギュア(人形)、である。一方、回収していないものは、f) ペーパー(サークルの情報や作者のフリートーク等が掲載されている1枚紙のもの)、g) グッズ類全般(ポスター、便せん、紙袋、シール等)、h) 量産されていないもの(自主制作のハードウェア、フィギュア等)である

見本誌票は、サークル参加のための申込書セットに綴じ込んである。これはコミケット47(1994年12月に開催した第47回のコミケットのこと。以下の「コミケット○○」の○○も同様に開催回数を表す)から制度化されており、初期から記入項目に変更はない。

見本誌の保管に当たっては、2004年に廃止された旧ゆうパックダンボール箱(大サイズ)及びその相当品を利用している(外寸:長さ390mm×幅290mm×高さ200mm)。

コミケット36(1989年8月開催)以前は、回数毎に整理はされていないが、コミケット37(1989年12月開催)以降は開催回、開催曜日、配置地区(ホール)、ブロック(一連のサークルスペースを表す単位)毎に管理されており、2008年7月現在、総数で約13,000箱弱のダンボール箱に見本誌が収納されている

1箱あたりの同人誌の冊数は、ジャンルによって異なる(例えば、女性向けジャンルの方が、B5判同人誌が少ない傾向がある)が、概算で平均150冊程度が収納されている。つまり、現在、約200万冊の同人誌を保管していることになる(表1参照)。その他、約500箱の同様のダンボール箱に、各種メディアの見本誌(前述のd)が収納されている。


このへんの情報を調べるためにどれだけ資料をあさったことか……。というか,外部には文書として出てなかった一級の情報もあるような。自分の調べた範囲では,特定の回の見本誌の箱数が記載されていたことはあったが,過去まで遡った数字が出たのははじめてである気がする。*1
以前自分がサークル数から試算したときは,C70時点で述べ876,896サークルが参加しており,各新刊1部出したとして90万程度,と計算していた。2008年7月時点ではさらに35000サークル×3回が増えているので延べ981,896サークルだが,箱数からの試算によればこの時点で約1,928,550冊の同人誌が保管されているらしい。つまり1サークル平均約1.96冊の同人誌が刊行されている計算になる*2
とすればC74を終えた現在では実際に200万冊を超えていてもおかしくない,といった程度だろうか。


その先では,自身も多少整理したがあまり踏み込んでいない各種の課題が取り上げられる。題のみを挙げると以下の通り。

【収集――膨大な発行数と網羅性】
【整理――書誌情報の不足と管理手法の未確立】
【保存――装丁上の特質がもたらす脆弱性
【提供――性表現を含む同人誌の管理】
【提供――同人誌を図書館で閲覧可能にすることへの合意形成】


過去に取り上げた話も,あまり詳しく取り上げてない話も*3,自分のより整理された形で言及されている。*4


ともかく,さすが数十年来コミケの運営に携わってる方々の仕事だなと感心するばかり。あまりにも感心しすぎて,自分がこれまでやってきたことなんて蛇足に過ぎなかったんじゃないか,とちょっと落ち込みながら,もしかしたら参考文献あたりにうちのがひょんと載ってたりするんじゃないか,などと淡い期待をしながら見ていく。
参考文献の列を眺めていき,最後の一つを確認して見つからず落胆。さてブクマコメントに何を書こうかな,と思ったときにふとその下に目が止まる。

Ref:

myrmecoleon. Myrmecoleon in Paradoxical Library. はてな新館.
 http://d.hatena.ne.jp/myrmecoleon/, (参照 2008-08-20).
 (上記ブログには、同人誌と図書館について、多くの示唆をいただいた。)


!!!!!


数秒画面を見つめたまま止まるくらい驚きました;
まさか代表らの連名のこんな大事な記事の末尾に載せてもらえるとは。
というかカレントアウェアネスにハンドルネーム載るのもはじめてというか,まさか載ることがあるとは。
なんとも報われた気分。本当に,本当にありがとうございます。

また、図書館情報学や図書館実務に関するノウハウといった面において、大学等の研究機関、図書館関係者の協力も必須である。こうした協力なしには、環境整備はおぼつかない。関係者の協力にも期待したい。


と本文にもあり,自身も改めてこの方面の仕事をちゃんと進めないとなあ,などと反省したり。
今後はもっと「同人誌と図書館」まわりの活動も進めていかないと,と心を改めたところでした。
(うん。いいかげんtwitterとニコ動はほどほどにして真面目にやろう。。。)

*1:無論,内部資料にはあったのかもしれないが。

*2:厳密にはこちらの試算では4回のSPが数に入っていなかったので,その分平均は少なめに見積もってもよいが誤差の範囲だろう

*3:たとえば保存関係は実態の知識があくまで一般参加者レベルでしかないので,あまりつっ込んで言及できなかった。

*4:若干漏れてる要素があるが,まあさまざまな思惑があってはずしているのだろうなとあまりつっこまないでおく。