ジャンルコードと分類法・2

の続き。今回はコミケのジャンルコードの話。


現在のコミックマーケットに参加する各サークルにはすべて,3桁のジャンルコードというのものがふられている。たとえば「男性向」*1なら200,「テニスの王子様」なら415といった感じ。

参考:ジャンルコード一覧(C71)


このコードはサークル参加申込の時点でサークル側で決められる。各サークルの曜日・配置ブロックなどはこのコードを基準に決められるため,多くの場合,ブロックごとのジャンルコードは一致する(というより,そもそも配置ブロックを決めるために申請するコードがジャンルコードなわけだが)。
ジャンルコードそのものは毎回変更されるが,いくつかの流行ジャンルを除けば,ここ数年は大きな変化はない。たとえば現在のジャンルコード3桁化はC60からはじめられたが,このときのジャンル数が43,現在が40で,うち35ジャンルは以下のとおり変更がない。*2

C60ジャンル C71ジャンル
100 創作(少年) 100 創作(少年)
101 創作(少女) 101 創作(少女)
102 創作(JUNE) 102 創作(JUNE)
105 学漫 105 学漫
106 評論・情報 106 評論・情報
810 FC(少年)   810 FC(少年)
811 FC(少女) 811 FC(少女)
812 FC(青年)   812 FC(青年)
813 FC(コロコロ) ×
814 FC(ガンガン) 814 FC(ガンガン)
    820 鋼の錬金術師
400 FC(ジャンプ) 400 FC(ジャンプその他)
    401 FC(ジャンプ球技)
410 SLAM DUNK ×
411 冨樫義博 ×
412 封神演義 ×
413 ワンピース 413 ワンピース
414 NARUTO 414 NARUTO
    415 テニスの王子様
204 同人ソフト   204 同人ソフト
207 Leaf & Key 207 Leaf & Key
208 ギャルゲー(PC) (初出がパソコン) 208 ギャルゲー
209 ギャルゲー(CS) ×
    210 TYPE−MOON
302 ゲーム(格闘)   302 ゲーム(格闘)
305 ゲーム(電源不要   &オンライン) 305 ゲーム(電源不要)
    306 オンラインゲーム
308 ゲーム(その他)   308 ゲーム(その他)
317 ゲーム(RPG)   317 ゲーム(RPG)
318 スクウェア& アトラス(RPG) 318 スクウェア・エニックス(RPG)
319 ゲーム(恋愛)   319 ゲーム(恋愛)
200 創作(男性向) 200 創作(男性向)
  アニメ(男性向)     アニメ(男性向)
  ゲーム(男性向)     ゲーム(男性向)
501 アニメ(少女)   ×
505 アニメ(その他)   505 アニメ(その他)
506 アニメ(サンライズ 506 アニメ(サンライズ
517 ガンダム  517 ガンダム
800 FC(小説) 800 FC(小説)
600 歴史 600 歴史
603 創作(文芸・小説) 603 創作(文芸・小説)
607 SF・ファンタジー ×
608 特撮(その他) 608 特撮・SF・ファンタジー
609 鉄道・旅行・メカミリ 609 鉄道・旅行・メカミリ
701 音楽(洋楽・邦楽) 701 音楽(洋楽・邦楽)
702 音楽(男性アイドル) 702 音楽(男性アイドル)
703 TV・映画・芸能   703 TV・映画・芸能
704 特撮(補足参照)   ×
705 スポーツ 705 スポーツ
900 その他   900 その他


コミックマーケット30’sファイル―1975‐2005』によれば,このようなジャンル分けをはじめたのはC31から。それ以前の回の記録をみると,アニメ同人誌の人気を受けてC11頃よりマンガ・アニメへの区分けが行われだし,C20頃からジャンル(マンガ・アニメ・混合&その他)とブロックを同期させている。

C31のさいのジャンルは21。うち現在もほぼそのまま残っているのは「創作(少年)」・「創作(少女)」・「創作(女性)(現「創作(JUNE)」)」「評論・研究(現「評論・情報」)」の4ジャンル。その他では最近合併された「SF」と「特撮」の2ジャンル(現「特撮・SF・ファンタジー」)ぐらいで,これ以外はさまざまな紆余曲折の結果に合併したり分離したりして実質原型をとどめていない。
数字のジャンルコードをふるようになったのはC33から。このときは00から90まで使っていたが,C36で若干整理して10-94*3,その後に前述したとおりC60で三桁化している。
ジャンルコードの変遷*4をみると,変遷の激しいジャンルとあまりないジャンルのあることがよくわかる。ジャンルコードの頭文字でいえば,1・6・7・9番台は90年代後半までにほぼ安定し,ほとんど変遷はない。まんが・アニメ・ゲームの三大ジャンルの変遷は複雑にからんでおり,3桁化以降は落ちついている。*5


コミケのジャンルコードには約20年の経験の蓄積があり,歴史的事情により合理的でない部分もあるものの*6,よく現実の需要をふまえた分類法として機能している。どうもデファクトスタンダード的な性格も持ち出しているようで,他の大規模同人誌即売会でもあきらかにコミケを意識した構成をとっているところが見られる。
参考:同人用語の基礎知識/ ジャンルコード


上記のとおり,基本的に日毎のブロックとジャンルコードは一致する*7。歴代コミケのブロックとジャンルコードの対応を整理すれば,どのブロックの本がどのジャンルにあたるかを理解するのは容易だろう。*8
また同人誌自体を分類するための方法として,現在もっとも知られているのがジャンルコードであることは疑いない。これは利用者が探すさいにも便利であるし,管理上も有益である。
コミケの見本誌をもとに同人誌図書館を構築するとしたら,ジャンルのふられているC31以降の同人誌(累積サークル数計算で97%)についてはこれをそのまま適用して配置するのがやはり一番適当だろう。


しかしながら,ジャンルコードはあくまで配置上の管理番号であり,そのまま分類法として適用するには問題のある点もある。コード番号が何度も変更していることもあり,そのままでは分類法としては使えない。このことから,過去から現在まで使われているジャンルコードとの同期性があり,かつ書架分類として有効な分類法を模索するのが適当と思われる。
次回においてこれを検討してみたい。

*1:いわゆるエロ同人。厳密には 創作(男性向)・アニメ(男性向)・ゲーム(男性向)の3ジャンルがあるが,現在では本文のとおりジャンルコードが共通のためにまとめて扱うのが通例。

*2:C31から続く「SF」ジャンルがついに「特撮」に吸収されたのは気になるところですが

*3:94は「よろず」ジャンルだがC37までで無くなる

*4:上掲書 p.383-389

*5:特筆すべき傾向としてはアニメジャンルの衰退がある。これは,アニメが見られていないのではなく,原作モノは原作のジャンルに配置することになったため。

*6:たとえば現在の3桁化は十進分類法に似ているものの,実際は大きく違うものであり,分類法としては勿体ない部分がある。

*7:例外あり。たとえば壁はジャンルコードとは無関係にふられているし,2ジャンルの間のブロックはジャンルが混合することも珍しくない。

*8:なお,実際の発行誌がこのジャンルコードに沿ったものであるとは限らない。ただ通常,活動内容とこのコードに大きな齟齬のある場合は落選する場合が多い。また申込み後のジャンル変更は周囲のサークルや客に嫌われる傾向があり,また営業上も不利な場合が多いので,普通は敬遠される。ただし,突発的なコピー本などでジャンルとは直接関係ない作品を扱うことはよくある。複数ジャンルにまたがって活動しているサークルも珍しくはなく(その場合も,どこか一つのジャンルコードはふられる),必ずしも発行誌とジャンルコードは一致しない。