同人誌と図書館 サークル参加者の視点から

上だけで終わらせて今日は本館の方をいじろうかと思ったのだけど,トラックバックをいただいてたので見たら,id:sinjowsさんがサークル参加者の視点から同人誌図書館に関する記事をあげてらっしゃいました。

http://d.hatena.ne.jp/sinjows/20060908

申込書やサークルにだけ配られてるコミケットアピールからの引用,それと見本誌雑感。普通,申込書を一般参加者が買うことは珍しいもので(つーか10年近く行ってるのに一度も買ったことないや。。。。)一般参加オンリーの立場だとわからんのですよ; まして出店サークルのみに配布される文書なんてどうやって見ろと。。。*1


ということで非常に興味深く読ませてもらいました。で以下,引用された内容に関するコメント。
なお,又引用になってるので,できればid:sinjowsさんの方か,お手元の該当資料を見られることをお奨めします。

コミックマーケット71サークル参加申込書セット』中の『コミケット・マニュアル』(p 5)より今回話したい所を引用

コミケットでは第一回目より見本誌を集めています。個人の営為としての表現、文化としての同人誌を後の時代のために残すという目的のためです。現状では、回、ジャンル、ブロックのおおざっぱな整理しかされていませんが、全て保管されています。同人誌図書館、資料館の設立に向けて、資料の保存に加えて整理を始めるべき時期に来ているのかもしれません。


同人誌図書館を作ることは,やはり公式見解なのですね。「全て保管されています」という発言は心強いですね。多少は紛失してるのが世の常なのですが,そういうこともない?のかな。
そしていまや整理をはじめる時期ですか。回・ジャンル・ブロックの分類だけでも実はけっこう使えるんじゃないかなー,というようなこともいろいろ考察中だったりするのですが,図書館屋からすればもう一歩踏み込んだ分類が必要なのは事実。ジャンルの分類法などにこだわれば,もしかしたら新しい分類大系すら築けるかもしれない。つーか,築かないと分類しようがない。
ただ,整理というのは本当に手間取る作業です。見本誌票(サークル名・誌名・発行日が書いてある)を簡易目録として使えると思うので,そのへんを電子化したものを基盤に使えばわりと手間は省けると思うのですが,それでも厳しいかも。分類するなら中身みないといけないしなー。
ただ,非常に興味深いです。

まあ分類するにしても,そのへんのオタ図書館員が手を出すより,ベテランコミケスタッフが作業した方が適切な分類になりそうな予感がしますね;
あああと,全文電子化すりゃ解決じゃね?とかいう意見があるかもしれないけど,ちょっと難しい。あのへんの技術はまだ発展途上で,OCRにしてもフォークソノミー界隈にしても,日本語ではいま一歩実用に耐えるものにはなってないように思っております(英語だとOCR系はかなり進んでる。たとえばGoogleAmazon)。
あとそもそも,Googleの件でもみられるように,本のスキャニング(複製)は,いくつかの例外事項を除き,著作権者の同意が不可欠。アメリカではフェアユースがあるのでGoogleはグレーラインですが,日本には同様の項目がないため見事に真っ黒。図書館での保存目的のスキャニングさえ,無許諾ではできんのです。*2ということで,見本誌の電子化はちょっと実現性が薄いかなと。

コミケットアピール70』(p 11)より見本誌チェックについて触れているとこを引用

(頒布中止についての項目より)見本誌チェックの目的は、準備会がサークル参加と共同責任をとれる形に持っていくことだと考えてください。


見本誌の役割というのは,文化保存的な意図はもちろん「準備会がサークル参加と共同責任をとれる形に持っていくこと」というのがあるのですね。雑誌の編集責任とかプロバイダ責任とかに近い感覚かもしれません(ただしそこまで強いものじゃない。もちろん法的根拠もない)。問題のある表現をただサークル任せにすることなく,準備会も一応の責任をとるというのは,やはり卓見。

あと,ここでは書いてないんだけど個人的に気になってる点として,準備会では運営上の理由で見本誌を利用してるみたいな話を見かけるんですよね。もちろん「スタッフだけずるいやー」とは言いません。たぶん配置とかの参考にしてるんだと思いますので。
ですが,それがどのくらいの頻度で行われてるか,というのは興味があったり。


というのも,コミケ側で私立で同人誌図書館を建てる場合はいいんですが,そうでなく寄贈みたいなかたちをとった場合,当然コミケスタッフが従来のように見本誌を利用できなくなる可能性があるわけです。寄贈の場合(国会図書館以外の場合も)法律や経済上でいくつか有利な点があります。*3 ただ寄贈の場合の最大のデメリットとして,コミケスタッフの融通が利きづらくなるというのがあると考えています。
コミケの運営上,たとえば過去何年分の見本誌はすぐ利用できる場所にないと困る,みたいなことってあるのかな,ってのはちょっと気になってたり。このへんはスタッフ経験者の方じゃないとわからないかなー。


以上,なかなか参考になりましたです。id:sinjows さんありがとうございました。
「バカやろう!それは○○だろうが!!」なんてとんでもない。こちらこそ勉強不足で;; むしろすでにあちこちからツッコまれてる気がします。。。

*1:やはり,一般・サークル・スタッフ全部経験しないとコミケットは語れませんな。同人誌図書館あたりは直球じゃないからいけると思ったんだけど,いやはや勉強不足。とりあえず次回は申込書セット買ってみよう。サークルもスタッフも一度はやってみたいんですけどねぇ……。

*2:厳密には,元資料を廃棄するなら複製してもよい。もちろん普通しない。国会図書館近代デジタルライブラリーでさえ,全部著作権確認して許諾とってからスキャンしてるんですよ。。。いつ死んだかわかんない人も大勢いるのに。。。

*3:たとえば普通にコミケが同人誌図書館を運営した場合,著作権法でいう「図書館」とは認められないでしょう。その場合,たとえ研究目的であっても同人誌図書館の本を無許諾でコピーすることはできなくなる。コピーの是非はともかくとして,そういうデメリットがいくつかある。