図書館員が極めて重要である33の理由(試訳)

# 最初の11項目について見直ししました(2007/02/03)
# 次の11項目について見直ししました(2007/02/07)
# 最後の11項目について見直ししました(2007/02/10)


# 翻訳一通り終わりました。原文含めての訳は以下をご参照ください。あと明らかな誤訳があったら教えてくれると嬉しいです。

図書館に関する調査・研究のページ “Current Awareness Portal” - カレントアウェアネス-R : 図書館員は時代遅れか?図書館員が極めて重要である33の理由 by chojo


パッと見面白そうだったんで訳そう,と思い,いつものようにExciteさんで試訳*1させてみると,ほとんど意味の通る文章になった。あとは図書館用語あたりも含めて直しつつ公開。


# 1〜11の詳しい翻訳はこっち。“図書館と”図書館員が極めて重要である33の理由(訳):1〜11 - Myrmecoleon in Paradoxical Library. はてな新館

1. Not everything is available on the internet

「すべて(の情報)*2がインターネットで利用可能であるというわけではありません。」

ネット上の情報もかなり多くはなってきましたが,まだまだ(人間の脳みそを除けば)出版物のかたちでしか存在しない情報は大量にございます。これをネットにつっこもうというのがGoogleの戦略ですね。
ちなみにかっこ内以外はExciteさんです。

2. Digital libraries are not the internet


「インターネットは“デジタルな図書館”ではありません。」電子図書館は「インターネット」じゃないんです。」


Exciteさんは「デジタルライブラリはインターネットではありません。」と訳したけれど,どっちかというと逆にした方がわかりやすい(意味上は単に≠ってことなのでどっちでも可)。
要するに,インターネットと図書館は違うよ,って話。インターネットはそのまま図書館の代わりにはならないよと。これは当然。

あるいは『電子図書館の神話』あたりを念頭においてるのか。Digital librariesを電子図書館とか訳してもいいんだろうけど,あれは日本だとかなり多義的なので,Digitalはまんまの方がいい気がする。


誤読。逆転させなくてよかった。図書館のオンラインコレクション(=電子図書館)はインターネットとは別物で,オンラインコレクションを使うのはインターネットじゃなくて図書館を使ってることなんだよ,って話。

3. The internet isn’t free

「インターネットは無料ではありません。」


Exciteさんまんま。「自由ではありません」とも訳せるのかもしれないけれど,そうすると意味がわけわからんのでExciteさんを信じた。
インターネットを使うためにはPCを用意したり回線引いたりしないといけないよ,って話かなと。
電子ジャーナルとかを使うのには,図書館だと無料だけど,普通にインターネット使うと高いよ,って話。

4. The internet complements libraries, but it doesn’t replace them


「インターネットは図書館の補足となりますが、インターネットが図書館に取って代わるものではありません。」

2で言った内容を具体的に。ちなみに,すでに大学図書館ではインターネットがないと業務になりません(死
2は誤読でした。図書館とインターネットは違うって話。

5. School Libraries and Librarians Improve Student Test Scores


「学校の図書館と図書館員は学生のテストの成績をよくしますよ。」


言えなくはないけど,テストの成績だけ言うのはどうだろう。
けっこう興味深い研究成果が紹介されてました。


6. Digitization Doesn’t Mean Destruction
7. In fact, digitization means survival

「デジタル化は崩壊を意味しません。」
「実のところ,デジタル化は生き残りを意味するでしょう。」


6で否定して,7で説明と。崩壊は“図書館の”崩壊ってことかな?
デジタル化は図書館の崩壊ではなく,図書館が生き残っていくことのチャンスだとかそういう話だろうか。
「図書館の崩壊」は正解。一方,7はあくまで「本の生存」の話で直接は関係なし。

8. Digitization is going to take a while. A long while.


「デジタル化にはもうしばらくかかるでしょう。 まだまだもうしばらく。」


Googleらの加速度的なスキャン速度を見てそういうのはどうかと思うのだけど。
一応ちゃんと計算して出した結論でした。でも異論はあるなあ

9. Libraries aren’t just books


「図書館は本だけではありません。」


口語的な表現なんだろうか。直訳すると「図書館は本じゃない」ですけど。
本しかないわけじゃない,ってことかな?
レファレンスとかもある,って話でした。

10. Mobile devices aren’t the end of books, or libraries


「モバイル機器は本の,そして図書館の終わりではありません。」


どこから Mobile devices が出てきたんでしょうか。日本でいうところの,携帯電話の普及は出版文化の終わりじゃないよ,みたいな感じ? みたいな感じでした。

11. The hype might really just be hype

「あのhypeは,まったく本当にただのhypeであるのかもしれません。」


hypeって語はなんか微妙な言葉っぽい。意味としては「詐欺,誇大広告,麻薬中毒者」とかあんまりいい意味ないですね。
Theがついてるのであきらかに過去の特定の「宣伝文句」の件でしょう。10と関連して,"Mobile devices are the end of books"とか言った人とかいたっけか。
やっぱり10に関連した話でした。hypeってのはTimesの1月の記事みたいですね。
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2092-2557653_1,00.html


# 12〜22の詳しい翻訳はこっち。
“図書館と”図書館員が極めて重要である33の理由(訳):12〜22 - Myrmecoleon in Paradoxical Library. はてな新館

12. Library attendance isn’t falling – it’s just more virtual now


「図書館の利用者数は減っていません。ただ、よりヴァーチャルな形へと変化しただけです。」


ここはid:pjdcnさんをパクってます(ぁ
かなり意訳な気がしますが,そういうふうに読むのが一番適当な気がする。
そういう内容だったけれど,かなり局所的な話。公共図書館いっぱんではない。

13. Like businesses, digital libraries still need human staffing


「ビジネスの世界と同様に,“デジタルな図書館”はまだ人間の手が必要です。」「オンラインビジネスと同様に,電子図書館にはまだ人間の手が必要です。」


“デジタルな図書館”と訳したことをちょっと後悔してきた。
でも本文には「電子図書館」(digital libraries)という言葉も一度も出てきませんでした。

14. We just can’t count on physical libraries disappearing

「私たちは、現実の図書館が見えなくなるのをただ当てにすることができません。」「現実の図書館が無くなるだなんて,とても思えないよ。」


「count on 〜」で「〜をあてにする」なんですね。すごいやExciteさま。熟語って学生時代ろくに覚えませんでした。だから英語が苦手なんだ自分。
でも意味がよくとれない。disappearing は「不要になる」ぐらいの意味にとるべきなんだろうか。
どうも“なくなるわけがない”くらいのニュアンスに近い文章でした。大幅に意訳して修正。

15. Google Book Search “don’t work”


Google Book Search は「機能してません」。」


本来の図書館の役割と比較して,ってことかなと。
図書館というより,Googleの目標にはまだ達してない,って話でした。


なんか数行まとめて訳した方が意味がとれそうなので以下はそうしてみる。
でも内容的にはほとんどつながりありませんでした。

16. Physical libraries can adapt to cultural change
17. Physical libraries are adapting to cultural change
18. Eliminating libraries would cut short an important process of cultural evolution


「現実の図書館は,文化の変容に順応できます。」
「現実の図書館は,文化の変容に順応しています。」
「図書館を抹殺することは,文化的な発展の重要な過程を切り捨てることになるでしょう」


図書館は文化の発展に大事,って主張。
このへんは詳しい説明を読まないとなんとも。

上から,NCLISのレポートの紹介,マクルーハンと新しい図書館の事例,アメリ公共図書館史の話。いまいち一貫してない。

19. The internet isn’t DIY
20. Wisdom of crowds is untrustworthy, because of the tipping point

「インターネットは日曜大工じゃありません。」「インターネットはdo-it-yourselfじゃありません。」
「群衆知は,それを覆す点で,信用できません。」「群衆知は信用できない,ティッピング・ポイントのために。」

Wisdom of crowdsWikipediaみたいな群衆知*3の話だと思うんだけど,どうもきれいに訳せない。the tipping point てなんだろ。そういうタイトルの本で使われてた概念でした。
DIYをどういう比喩で使ってるのかも不明だなあ。Do It Yourself の意味で使ってたりして。使ってました。

21. Librarians are the irreplaceable counterparts to web moderators
22. Unlike moderators, librarians must straddle the line between libraries and the internet


「図書館員はWeb上の仲介者とは代え難い役割を担っています。」「図書館員はWeb上のまとめ役とは代え難い役割を担っています。」
「Web上の仲介者とは違い,図書館員は必ず図書館とインターネットとの境界にまたがって存在しています。」「Web上のまとめ役とは違い,図書館員は必ず図書館とインターネットとの境界にまたがって存在しています。」


web moderators ってのは人力検索の回答者とか電車男を補助してたネラーとかそういうことだろうか。Wikipediaとかmixiのコミュ管理者あたりのが近かった様子。ユーザーの意見をまとめるまとめ役とか司会って意味。
このへんは同意。ネットだけでなく,現実においてもサポートを受けられるかどうか,ってのは重要なことだと思う。


# 23〜33の詳しい翻訳はこっち。
“図書館と”図書館員が極めて重要である33の理由(訳):23〜33 - Myrmecoleon in Paradoxical Library. はてな新館

23. The internet is a mess
24. The internet is subject to manipulation
25. Libraries’ collections employ a well-formulated system of citation

「インターネットは混乱です。」
「インターネットは操作を受けることがあります。」
「(それに対して)図書館の収集では,言及されたような,引用による,よく定式化された方式を採用しています。」


図書館の管理はよく検討された信頼のできる方式を使っているから,インターネットと比べて混乱や操作は少ないよ,ってことかなと。ちなみにcitationは“言及された”ではなく,やはり陰陽分析の話でした。これは誤訳。
このへんはちょっと首をかしげるかも。出版界だって操作は受けてるし混乱もしてるでしょうに。

26. It can be hard to isolate concise information on the internet

「インターネットから簡明な情報を取り出すことは困難です。」


Exciteたんは「インターネットの簡潔な情報を隔離するのは困難である場合があります。」とかわけわかんない訳を出してきたけれど,意味としてはこんな感じだと思う。実際こんな感じでした。
上記の「混乱」と関係するんだと思うんだけど,流れ的に下記のニュースアーカイブにもつながるかも。それとも独立した言及か。しいていえば独立した言及ですね。ネットではちゃんとした情報を見つけるのが難しい,って話。あとWikipediaが取り上げられて,一定の評価はくだしてるものの限界をあげている。

27. Libraries can preserve the book experience
28. Libraries are stable while the web is transient
29. Libraries can be surprisingly helpful for news collections and archives


「図書館はその本の経験を保存「本を読む経験」を確保しています。」
「Web(上の情報)は一時的ですが,図書館(が保存する情報)は堅固です。」
「図書館は,ニュース収集とそのアーカイブにおいて,非常に役に立ちます」


まとめちゃったけど,わりとバラバラな話でした。上から,「本を読む経験」の重要性,Web上の情報の揮発性,ニュース記事収集に関するネットの利点と図書館の利点について。「本を読む経験」の話は興味深かった。揮発性の話は耳タコ。ニュース収集については以下に述べてる通り。


Web上のニュースがすぐ消えるのは確かにそうなんですよね。1年前の新聞報道の内容でさえろくに残ってないので,ちょっと昔のことを調べるには図書館にいかないといけない。
もっとも,これはWebが本質的にそうだからじゃなくて*4,新聞社等の報道機関の手口が汚いだけじゃないだろうか。公開してあちこちに複製を許可すれば自分のところはシステムに投資しなくても保管できるのに,あとで有料データベースを使わせて商売にするためにわざと過去の新聞記事は削除する。このへんの慣例さえ打破すれば,Web上のニュース記事もわりと堅固になるかなと。

30. Not everyone has access to the internet
31. Not everyone can afford books


「誰もがインターネットにアクセスできるわけではありません」
「誰もが本を買う余裕があるわけではありません」


公共図書館の理念。というか,途上国などの貧しい地域の人々に対する図書館の利点でしょうか。内容はほぼ予想通りでしたね。誰に対しても情報へのアクセスを確保するために,ってところか。これは同意。ホームレスにインターネットは情報を教えてくれない。

32. Libraries are a stopgap to anti-intellectualism


「図書館は反知性主義に対する一時しのぎの策図書館は反知性主義を止める方策のひとつです。」


これは…… stopgap って「一時しのぎ」とか「場つなぎ」とかのあんまり肯定的じゃない表現っぽいんですが,そういう意図じゃなさそうですねこれ。
実はここで気になってさすがに原文の説明読みました。ここは「図書館は反知性主義を止める方策のひとつです。」くらいの表現が妥当かも。妥当でした。内容としては,ネットメディアに対するオルタナティブとしての図書館みたいな感じ? ややメディア論。

33. Old books are valuable

「古い本は大切です。」

なんでここで,と思ったら,原文では「よく図書館が「本の博物館」になるとか言われてるけど,実際に古い本を保管するという役割は大切なことなんですよ」というような文脈であるらしい。反論に対する皮肉というかなんというか。


で,ざっと訳してみて感想。
あれだ。


目次だけ訳しても意味がわかりませんorz


ちゃんと原文読まなきゃダメですね。一個一個の項目は短いのですぐ訳せるだろうし。誤読もしてそうなんであとで直します。コメントもそのへん割り引いて読んでやってください。


[以下,追記]


で,原文読みました。やっぱりいまいち訳しきれてない部分はあったけど,おおむね納得。
けっこういいことも言ってますね。試訳の段階で評価下げた分,あとで読み直して見直したというか。
個々の項目について詳しい内容は11項目ずつ分けてあるので各記事をご参照くださいな。あとできれば本文も読んでいただくとナイスかと。思いっきりの誤訳があったら教えて下さい。トラックバックもらった中でも言われてましたが,わたくし英語はかなり怪しいのでw

*1:Exciteでざっと訳させてから,本文を見ながら直すのがいつものやり方。文法はわかるけど単語がわからないダメな人なので。

*2:id:pjdcnさんは「すべての人」と訳しちゃってますが,everything は thing ですし,is available は形容詞なので「人」と訳すのは間違い。

*3:訳したあと思ったけど,“集合知”のが一般的?

*4:本質的にそうな部分もあるんですが,分散保存あたりをちゃんとやれば立派に解消できると思う。