とりあえず、まとめてみる――「コミックマーケット」見本誌図書館設立の希望


鷹取かずき氏がhttp://www.rough-note.net/index.cgi/040とのエントリで,COMIC1の見本誌寄贈問題とその後についてまとめてくれている。これにこたえて,それ以前までのコミックマーケットの見本誌図書館設立案の流れについて,わかる範囲でまとめてみる。

1975年


1975年12月21日。コミックマーケットその第一回。コミケのはじまりから,開催中に頒布された見本誌回収の試みははじまっている。当時の様子については30's FILEの下記のインタビューが分かりやすい。

若手スタッフ 見本誌って最初から回収されてたんですか?

米沢 1回目から。どうしても提出してくれないところからは当日買ったりとか、他の即売会に行って買ってきたりとか、同人誌を一応全部集めようというコトでやったから、最初の頃の見本誌とかはコミケットに参加してない見本誌とかが混じってる。個人で買ったやつも入れたり。

(代表インタビュー2 - 『コミックマーケット 30’s FILE』(コミックマーケット準備会編,2005) p.94)


以後現在まで,コミケにおける見本誌回収は欠かすことなく続けられ,現在に至る。これ以前の同人誌の流通はもっぱら郵送などに頼っており,即売会などのかたちで頒布することはまだそれほど活発ではなかった。そうした同人誌即売会初期の時代から見本誌回収が行われていた。
その最初期の動機については詳しく語られてはいないが,現在もサークル申込書内のコミケットマニュアルにおいては「個人の営為としての表現、文化としての同人誌を後の時代のために残す」という目的が掲げられている。
これが最初から貫徹されていたのなら,まさしくアーカイブ的な目的で記録され続けてきたことになる。これはある面で,図書館の理念と重なるものであることは言うまでもない。


なお,これはあくまでコミケの話であり,その他のイベントにおける見本誌の扱いは異なる。他のイベントにおいては内容確認のための見本誌チェックの比重の方が大きく,回収せずに返却する場合が多い。要するにコミケは特殊である,というのは理解した方がよいらしい。
また初期におけるコミケ以外の同人誌即売会の見本誌の扱いについての資料は残念ながら手元にはない。このあたりについては下記の先輩方のお話を参考のこと。

1980年

米沢 準備会の形が一応できて、準備会スタッフが集まれる部屋を共同で借りようという話になったのが80年かな。4畳半とか6畳半とかの安い物件があるでしょ。それをみんなで千円ずつだしあって、物を置こうとかいって。それまで家にあった見本誌をそこに運んだんだけども。
(略)
ベル その部屋は渋谷の桜ヶ丘にあったんですよ、古いアパートの2階で……。

(引用元上に同じ)


1980年に渋谷のアパートを借りて準備会の事務室としたとき,そこに見本誌を置くこととなった。それ以前,これらの見本誌は家(米澤氏の家か,あるいは準備会の誰かの家だろう)に置いていたようだ。

1987年

初期においては、コミケットで集めた見本誌は、コミケットの事務所に併設している書架に収めていたが、コミケットの規模の拡大とともに収容が不可能となり、1987年頃に千葉県に見本誌保存用のプレハブの倉庫を建設した。

CA1672 - マンガ同人誌の保存と利活用に向けて -コミックマーケットの事例から- / 里見直紀,安田かほる,筆谷芳行,市川孝一 | カレントアウェアネス・ポータル


その後,1987年に千葉県のプレハブ倉庫を建設し,ここに見本誌は移動される。

1993年


1994年初頭に発行(編集自体は1993年に行われたものと思われる)された『マンガ&アニメ同人誌ハンドブック』では,見本誌のことが下記のとおり説明されている。

●見本誌

サークルの発行物で、即売会に提出するための本。現状で見本誌回収を行っているイベントは、コミケットコミティアぐらいである。即売会はこれを資料として活用しているが、本の置き場にはみんな頭を悩ませている。コミケットの見本誌は、千葉の倉庫にほとんどすべて保管されており、もしコミケットが何らかの理由で終わるようなことになれば、全て国会図書館に寄贈しようということになっている。でも,あんなにいっぱいもらったら,困るだろうなあ。

阿島俊*1マンガ&アニメ同人誌ハンドブック』(久保書店,1994.01) p.188)


この「国会図書館に寄贈」という見解がいつ頃から成立しているかは不明だが*2,少なくとも1993年時点,おそらくそれより以前より,コミケの存続するまでは保管し,それが不可能になれば図書館等に寄贈する,という主旨は準備会の中で共有され,また告知されてきたと思われる。
『マンガ&アニメ同人誌ハンドブック』は1994年末にも改訂されているが,この箇所についてはほぼ内容は変わっていない。

1995年


入手できている資料のうちで,コミケの公式資料で資料館(図書館)等を設置するという主旨のことがはじめて確認できるのは以下である。

Q. やっぱり見本誌は完璧な出来の本でないとペナルティですか?


A. 見本誌は同人誌資料室の設立を目指して集め続けてきました。ここにしかない以上、キチンと保存したいものです。それに乱丁や落丁の本が貴方のちゃんとした「作品」ですか?

ペナルティとかの問題でないと思います(以下,米やんの似顔絵)

(くまたかつみ21才「シャクティとマリアおかんのコミケ準備会への質問」- 『コミケットプレス総集編』1 p.37(初出:Vol.2, 1995.08) 二編ある四コマ漫画の右四コマ目。三コマ目まではくまた氏の絵だが最後のコマは米沢氏もしくは準備会で描いたものと思われる。)


内容からすると,1995年以前から同様の考えが準備会で共有されていたようだ。1995年以前にも同様のことが言われていた可能性も高い。この発案がいつ誰から出たのか*3は不明だが,少なくともこれ以降準備会公式の見解となっている。


またその次のプレスのQ&Aにも言及がある。

Q4 回収した見本誌は,コミケが終わった後はどうなるの?どこに保管してあるの?

A 見本誌は毎回ブロック毎に整理して,千葉の某所にある準備会の見本誌倉庫に保管しています。一応完全とはいいませんが第一回目の分から残してあります。いつか同人誌資料館を作るのがコミケットの一つの夢です。

(サークルQ&A - 『コミケットプレス総集編』1 p.114(初出:Vol.3, 1995.12)*4


また未確認だが,どうもこの前後の時期にサークル参加者に向けてのアンケートで,今回C75と同様に「コミケで集めた見本誌で図書館を作るとしたらどうか」という主旨のものがあったらしい*5。このあたりは後日確認の予定。


なお,1997年初頭刊行の『新編マンガ&アニメ同人誌ハンドブック』ではこれを反映してか,以下のような記述になっている。

●見本誌

サークルの発行物で、即売会の主催団体に提出するための本。そのイベントで売られたことのない新刊を一冊出す。現在で見本誌回収を行なっているイベントはコミケットコミティアぐらいで、資料として活用されている、コミケットには将来的に同人誌資料館、図書館開設の予定があるらしいが、その量の多さ、運営方法などもあって、現実化はかなり先になりそうだという。その前にコミケットが何らかの理由で終わるようなことになれば、全て国会図書館に寄贈しようということになっている。困るとは思うのだが……。

(『新編 マンガ&アニメ同人誌ハンドブック』,1997.1 - p.193)

2001年


当時の見本誌倉庫の様子が,C60のカタログのコミケットプレス出張版に漫画で紹介されている。

(関連するネームの抜粋)

「見本誌保管は千葉県某所でしています。」

「土地がぬかるんでるので年々ちょっとずつ埋まるプレハブ」

「年一回の見本誌整理は15人程で行います。」

「車で2時間半かけてやっと到着」

コミケットプレス出張版 - 『コミケットプレス総集編』3 p.167 (初出 : コミケットカタログ60*6, 2001))


この2年後には倉庫を移すことを考えると,すでにかなり危険な状態だったのではないかと思われる。資料の保存環境を考えると非常に恐ろしい。

2002年


C63の反省会にてコミケ図書館の概算を出していた旨を報告。

●見本誌によるコミケ図書館を作ろうと思ったけど、概算出したら10億円くらいかかる。「上九一色村とかに作ったら安いかもしれないけど、誰も来てくれないだろうしねえ…」一般公開は無理っぽいが、たとえば「キャプテン翼の関連のものだけ」みたいな形式だったら可能かも。

(J-oの日記跡地 2002年8月より)*7

2003年


これまであまり表立って言及されていなかったが,2003年に千葉から埼玉に倉庫を移動していたらしい。

その後、プレハブ倉庫の増築を行ったが、増え続ける見本誌の収容が追いつかず、また、保存状態にも問題が発生したため、2003年に埼玉県に鉄筋コンクリート製の倉庫を取得した。現在は、全ての見本誌をそこに収納している

CA1672 - マンガ同人誌の保存と利活用に向けて -コミックマーケットの事例から- / 里見直紀,安田かほる,筆谷芳行,市川孝一 | カレントアウェアネス・ポータル


これを2002年夏のC63反省会の発言とからめると,千葉県倉庫の収容力や保管状況悪化の限界を感じ,2002年前半に図書館として立て替えようとしたが概算をとって断念。2003年に倉庫のみ改める,というかたちと思われる。
つまりもしこの時点で明治大のように協力する団体があった場合,コミケ図書館がすでに出来ていた可能性がある。過去の話だが。

2005年


C69の反省会の質疑応答において下記のコメントがみられる。

Q4.(一般)準備会で集まった見本誌のデータ化をしてはどうか?ネット上で閲覧できたり、天災等で消失に対するバックアップ等。

A4. 公開する際はサークルの承諾が必要。以下の回答はまだ非公式のもの 現在廃校を利用して同人誌図書館の構想があるが、具体化する確率は低い。児童ポルノの問題もある。

http://hashimoto.chagasi.com/repo/comike/c69/1230b.html


なお廃校を利用した漫画図書館としては,2006年11月に開館した京都国際マンガミュージアムがある。勘ぐるわけではないが,時期的には非常に近い。また後述するように森川氏はこの時期から漫画図書館の計画を立てていたらしい。

2007年


C73の拡大準備会において下記のコメントがみられる。代表が変わってからも同人誌図書館設立のポリシーが生きていることが確認できる。

  見本誌の回収は昔からやっているが、法律対応のためにやっているわけで
  はない。昔は、いつか同人誌図書館を作りたいねとか話していた。
  見本誌はこの部屋の6〜8倍くらいの量がたまっている。
   (注:拡大準備集会が行われている部屋は、だいたい25mプールを
      ひとまわり縮めたくらいの広さです)
  見本誌チェックの意味は2つある。
  1つは、刑法175条に沿わせ問題のないようにすること。
  1つは、将来の同人誌図書館を夢見つつ。


(略)


Q:第1回から第72回コミケットまでの見本誌がかなりたまっているそうだ
  が、同人誌図書館の話は現在どうなっているか?
  すぐに図書館というのは無理でも、例えば作家や発行誌名をデータベース
  化してインターネットで閲覧するなどできないか?

市:同人誌図書館は僕らの目の黒いうち、20年くらい、にはやりたいと考え
  ている。
  データベースは、コミケが輩出した作家を知りたい、とか、この人がこん
  な本を!?とか、この本は持ってないといかんなぁとか、いろんな意味で
  重要な場所になる。
  しかし既に量が凄い。
  1回のコミケで、見本誌はゆうパック(大)800箱になる。
  2日間開催のときは少ないかというと、それほどでもなく、700箱。
  いつかは見れるようにしたい。そのときは御協力を。

http://t_szhr.at.infoseek.co.jp/triangle73.txt

2008年


これ以降については鷹取氏のまとめが詳しい。

まず,コミケ代表のひとりでもある市川氏が代表をつとめる4月にCOMIC1準備会のブログにおいて,回収している見本誌を明治大に寄贈するという告知がされる。

COMIC1ではサークルさんより見本誌を頂いております。

本来ならば、COMIC1準備会で永久保存したいところ
なのですが、準備会の事務所にもたくさんのスペースは無く
どうしたものかと考えました。

現在、明治大学で新しい図書館(博物館?)らしいものを
計画中だと伺い、明治大学でお役に立つならばと
COMIC1の見本誌を、明治大学に寄贈する事に致しま
した。

COMIC1準備会日記 見本誌


その後,サークル関係者を中心に反対があり,希望サークルについては寄贈しないことなどを約束した上で,イベント自体は無事開催された。


6月,コミケットアピール74において「米澤嘉博記念図書館」(仮称)の設置の計画が進んでいることが告知される。

最後に、準備会前代表故米澤嘉博が所蔵していた膨大な書籍・雑誌などについてですが、米澤の母校である明治大学により「米澤嘉博記念図書館」(仮称)が設置され、これらの蔵書を寄託・寄贈し、マンガ、サブカルチャー研究に資する形で公開することで、現在調整が進んでいることをお伝えしておきます。資料の保存・活用の重要性については、生前米澤自身が繰り返し主張してきたことでもあり、準備会としても協力していきたいと考えています。

(ごあいさつ - コミケットアピール74, 2008.06 *8


後日の拡大準備会において,記念図書館のこと,今後準備会としては見本誌図書館についても模索中であること,COMIC1の件はそのテストケースであるとの旨が語られている。

市:明治大学米沢嘉博記念館について。
  米沢氏の蔵書を寄贈し、目録を作って一部は閲覧できるようにしてもらう予定。
  見本誌図書館については模索中。まずは米沢嘉博記念館を。来年にはオープンしたい
  解決すべき問題も多い。パチられる対策とか。見せられないものもある。エロとか。
  コミケの見本誌については場所、サークルへの伺いなど、問題が多い。
  入場を有料にするか、未成年入場不可にするか、研究施設としての側面が強いこともあるが
  早めにミュージアム的側面を準備したい。

筆:コレクターの蒐集物は他人から見たらゴミ。残せることはとても有難い話。

(略)

Q:図書館は電子化すれば場所の問題を解決できるのでは?
市:本を電子化すると、作業中に痛んでしまう。あと、量が膨大。
  目録作成の時にどこまで目録に含むかなど検討していく

Q:米沢嘉博記念館の経緯などは?
市:去年ぐらいに明治大学の森川さんから話をもらって。
  先日土曜に初めて建物を見ました。

Q:comic1では見本誌の寄贈について物議をかもしましたが。
市:comic1では実験的にやってみた。
  サークルさんの意見も聞けて、それをベースにコミケの対応も練ったという面も。
  コミケットでは、見本誌は寄贈でなく短期間の貸し出しになる予定

@++ - あっとまーく・いんくりめんと -:7/21 コミックマーケット74 拡大準備集会 レポート


米澤嘉博記念図書館」については明治大の2007年度事業報告書にも記載がある件については,公開時期は不明だが,過年度分がだいたい6〜7月に公開されているようなので,時期的にはアピール発行と同じ頃と思われる。現状唯一の明治大側からの公式資料による言及である。この報告書には見本誌については何も書かれていない。


また拡大準備会でも名前の出ている森川嘉一郎氏がC74で頒布した同人誌「おたく博物館計画 ver.080817」には思いっきりこの「米澤嘉博記念図書館」の計画案(図面)が掲載されている。これを見るかぎりでは,どう考えても見本誌すべてを設置するのは不可能なので,やはりあくまで米澤前代表の旧蔵書を収蔵する,という以上のものではないらしい。*9
なお,雑誌「ちくま」の今月号で森川氏が漫画図書館の意義について述べている。内容は漫画を専門に収集する図書館が必要であること,京都国際マンガミュージアムの紹介にとどまり,記念図書館の話はないが,最後の段落で次の回でこれらについて書くことを予告している。どこまで書かれるかは不明だが,「米澤嘉博記念図書館」の話は間違いなく出てくるだろう。

実は京都で先行施設が実現される中、筆者は、それと同等以上の施設を東京に設けるべく、三年ほど前から計画を立て、準備を進めてきた。そしてさまざまな方々と共同し、協力を得て、ようやく来年中に、計画の一部が実施されることとなった。本連載の私の次回担当回では、その計画と経過について、報告したい。

森川嘉一郎オタク文化の現在21 漫画図書館計画」 - 『ちくま』452, 2008.11 p.51)


その後,C75のサークル参加申込時のアンケートにおいて,下記の内容の問い合わせがされた。
自身もここの回答とは別に自由記入欄に考えを述べたりしてみた。

Q2.コミケットでは、同人文化の保存のため、かねてから同人誌図書館を作ることを長期目標にしており(『コミケットマニュアル』p.5参照)、見本誌をすべて保存しています。その図書館は、どのような公開の形が望ましいと思いますか?


そして今月,サークル参加者に配布されたコミケットアピール75では,記念図書館が現在も進行中であることと,上記のアンケートの結果が報告されている。こちらは手元にあるので*10引用してみる。

さて、前回のアピールにて、お知らせした「米澤嘉博記念図書館」(仮称)ですが、明治大学学内に我々と米澤英子が参加した形での専門のワーキンググループも立ち上がり協議が進んでいます。米澤が所有していた蔵書の移動も本格化しつつあります。
今回の申込において、コミケットが長期目標としている「同人誌図書館」の公開形態について、サークルの皆さんにアンケートを実施しました。その結果ですが、「誰でも利用可能:25%」「前提知識を持つ人に公開:61%」「研究目的のみ公開:10%」「反対:5%」となりました。今後については、このアンケート結果や、自由記述いただいた反対理由にも留意しつつ、さらに検討を深めていきたいと思います。ただ、反対理由の中には「奥付の住所・氏名は『個人情報』である」、「限られた個人の趣味だから」、「サークルの売り上げが落ちる」という意見もありました。何を懸念されているか理解はできるのですが、一方で、自分が同人誌を発行していることの意味・責任について、今一度考えてほしいと思います。不特定多数に頒布を行う同人誌活動は決して責任から放たれた「美味しいところ取り」ではありません。また、図書館というのは、新しい出会い・発見の場でもあり、文化の蓄積の場でもあります。前回の繰り返しにはなりますが、社会から注目を受けるようになった同人誌の世界を、内部の論理だけで社会に納得させていくことは難しいことです。我々も様々な機会を通じて言葉を尽くして説明を続けていきますが、サークルの皆さんのご理解とご協力もよろしくお願いします。

(ごあいさつ - コミケットアピール75, 2008.11)

まとめ


以上をまとめると,

  • コミックマーケットにおける見本誌の回収は第一回から行われている。その趣旨はコミケットマニュアルでは「個人の営為としての表現、文化としての同人誌を後の時代に残すという目的」と明示され,同人誌図書館についても記載されている。このことはサークル参加者には繰り返し告知されている。
  • 同人誌図書館計画そのものは1995年頃から準備会公式の見解として言われている。1995年のコミケットプレスでは「見本誌は同人誌資料室の設立を目指して集め続けてきました」との言及が米やんの似顔絵とともに記されている。それ以前に発行された本の中では「(コミケが終わったら)国会図書館に寄贈する」としている。
  • 同人誌図書館の計画は過去に何度か,見本誌倉庫の限界などと前後して準備会において検討されており,その結果がコミケの反省会等で説明されている。また,同人誌図書館に関するアンケートも今回がはじめてではないらしい。
  • 明治大学の「米澤嘉博記念図書館」(仮称)は森川氏の提案によりはじまり,来年には開館の見込みである。ただしあくまで米澤氏の旧蔵書を保管・展示・閲覧する施設で,規模の上でもコミケの見本誌がおけるようなものではない。基本的には切り分けて考えるほうが妥当(見本誌を選択的に展示するとか,COMIC1の本だけはそちらに保管するなどといった処置はありうるかもしれない)。
  • ただ準備会としては,記念図書館の設置を足がかりに,コミケの悲願の一つである見本誌図書館を実現させたいという期待があるものと思われる。ただしあくまでまだ希望の段階であり,具体的な設置や運用は一切決定していないのではないか。むしろ今回のアンケートやサークルの反応などを材料にそれを考えていく段階か。
  • 現在の段階でできることは,同人誌図書館について,何が問題であるか,何が嫌であるか,何を求めるか,どうすればそれが解決できるか,どうだったらよいか,といったことを考え,準備会に伝えることだろう。


というあたり。


だいたい調べれば調べるほど,コミケは昔っから同人誌を集めてコレクションをなにがしかのかたちで公開しようとしてた,という形跡ばかりが見つかるのですよね。要するにスタンスは一貫して変わっていない。
コミケがそういう場所である,という姿勢はコミケットマニュアルをはじめずっと示されていたことでもある。とはいえ理解されてなかった部分はあるだろうし,また「公開はされたくないけどコミケで頒布したい」みたいな人を,自由な表現の場であるコミケとしてはどう扱うか,みたいなのはコミケがらみでは散々あるジレンマである。
自分としてはむしろどんどん推進して欲しい立場であるし可能なかぎり協力したい。一方で,サークルの感情等で難しい点もあることは理解している。だからたとえ感情的な理由であっても,どんどん表に出して準備会に伝える,ということが大事なんじゃないだろうか。

*1:編者の阿島俊は米沢前代表の筆名

*2:これ以前のサークル参加申込書やアピールなどには記載があるかもしれない。またカタログもすべては確認できていない。

*3:米やん本人の考え,というのが一番ありそうではある

*4:以前引用したさいに時期を読み違えていた。C49のプレス初出のはず。

*5:カタログ未確認。今度関東に帰ったときに国会図書館で確認する予定。あるとしたらおそらくC48〜51の時期。もともと自分が同人誌図書館のアイディアに触れた最初であった同人誌「私立コミケット図書館」(麒麟館, 2003.08.17)は,作者がこのアンケートを見たことがきっかけで書かれたものだった。

*6:以前にプレスのほうだと思って誤記してたが,よく考えたら出張版なので掲載はカタログでした;

*7:すでにサイトは閉鎖されており,InternetArchiveより確認。: http://web.archive.org/web/20041103113340/www.remus.dti.ne.jp/~j-o/dia/0208.html

*8:ただし手元にないので鷹取氏からの又引用; :http://www.rough-note.net/index.cgi/028

*9:この本にはほかに,その後に計画している「日本先端文化複合アーカイブミュージアム」の計画資料も掲載されている。こちらなら見本誌を収蔵することも可能かもしれないが,ロードマップでは201X年とあるし,あくまで計画段階だろう。

*10:3日目西つ01aで参加しますよ。この件あたりを扱った本を出します。とこっそり告知。ちなみにこの文書もその下書きの流用です