同人誌図書館の法的問題:二次的著作物の権利


で,上記のを読んだあと,「でも二次創作と二次的著作物って違うよね。二次的著作物は許諾を得てしたもののことだよね」とか思ってたけれど,気になって著作権法あたったら,特に二次的著作物であることについて許諾の可否は記載されていない。要するに勘違いorz

第二条
(中略)
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

著作権法より。以下同じ)

二次的著作物の場合,二次著作者と同様の権利を原著作者ももつ。つまり公表から複製・公衆送信等々の権利を原著作者も所有する。

第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。

第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。


「同人誌=無許諾な二次的著作物」の場合は,販売された同人誌の作者は公表権*1(財産権なら複製権)の侵害でしょっぴけるし,販売されても譲渡権は消尽してない(不正な譲渡にあたる)から再譲渡は不可か。*2このため,まず同人誌古書店は成立しない。ヤフオク等での転売も不可。

第百十三条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
(中略)
二 著作者人格権著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を情を知つて頒布し、又は頒布の目的をもつて所持する行為

「無許諾な二次的著作物」は同時に翻案権も侵害し,また二次的著作物であるなら原著作者の複製権も侵害。著作権侵害により作成された物を頒布(および頒布の目的で所持)する行為は上記のとおり著作権侵害とみなされるため,販売や販売目的での所持は不可,と。委託販売も不味い。
ついでにいうと,コミケ等の同人誌即売会は規約上「売られている同人誌は著作権侵害をしていない」建前で成立している。よって著作権侵害が明確な同人誌は,そもそも即売会参加もできない……。


なるほど,これはキツい;


もちろん,「同人誌=無許諾な二次的著作物」という前提は誤りなのは上記したとおりなんだけど,もっとも多くの同人サークルを抱えると思われるアニメ・マンガ・ゲームのパロディ層がかなり難しい立場にある。つまり「似た絵」を描いて販売すること自体がNGになる。
現状は,明確なガイドラインをとるいくつかの著作権者を除き,積極的な許諾も禁止もしない形での無視という形であるからどうにかもってるわけで,これがすべて禁止に流れたら……となると著作権についての懸念はやはり大きい問題だわ。


これを同人誌図書館について考えた場合……あれ,113条の「頒布」ってどう考えればいいのだろう。図書館での貸出は頒布と見なしていいのだろうか。

第二条
(中略)
十九 頒布有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。


貸与も,ってのは気づかなかった。そうか,図書館の貸出も頒布なのか。そうなると,図書館で貸し出すことを前提に所持してること自体が犯罪? 国会図書館コミケカタログあるけど?
やはり「情を知って」が問題なのかな。あるいは,貸し出さなければいいのか。館内閲覧なら問題ないのかな?


あと,譲渡権の問題。もし著作権侵害している同人誌を認めるのであれば,その見本誌の譲渡は適法に行われていないため,前述したとおり譲渡権が消尽していない。外部機関に寄贈する行為が違法になる可能性がある。。。。
こう考えると,コミケ立がやはり唯一の道なのか? むー。


せめて,国会図書館への寄贈についてはこうした著作権の規定の例外として欲しいな。でないと「コミケがもし終わったら」の最終手段さえ危うくなる。四半世紀以上にわたる一つの文化の記録が公的な領域でまったくフォローできなくなる。


というか,あそこについて著作権法上の何の例外規定も存在してないってのが不思議。それとも,本当はどこかに抜け道とかあったっけ?

*1:原著作者のもつ公表権は,原著作を公表した時点で終了したものとみなせるらしい。詳しくは→id:myrmecoleon:20070224:1172299737:title

*2:ちなみに二次的著作物で原著作者の氏名・出所の表示が無い場合は,非親告罪として警察でもしょっぴけますね。しかし表示してしまうと二次的著作物であることを認めてるという罠。どうしろとorz