同人誌と図書館 著作権に関するメモ4 著作権侵害の時効


下記の分の続き。最後は訂正でなく発見っぽいこと。
著作権侵害には時効がある。保護期間の話ではなくて,著作権侵害行為を訴訟できる期間(訴訟する権利の消滅時効)というのがあるという話。著作権法だけをみていると盲点ですが,著作権の問題を考えるときはちゃんと絡んでくるんですよね。


以前たけくま氏の騒動のおりにあちこちで見てたので存在は知っていたのだけど,あんまりよくわかってなかった。で,今もそんなにわかってないけど,これは役に立つ話かもしれないのでメモっておく。


ちなみになんで役に立つかというと,訴訟に時効があるということは,少なくとも過去に発行された同人誌に関しては,以後に著作権侵害行為をおこなわないかぎり,著者も同人誌を管理する側も,訴訟がおよばないため。時効であるから円満に解決されてるとは言えないものの,あきらかな著作権侵害を含む同人誌の閲覧に対して著者にリスクがあるかどうか,という点を考えると十分意味があるかなと。


で,具体的な時効の内容だけれど,著作権侵害に対する訴訟には刑事と民事があり,そのうち民事については以下の3種類の請求権がありうるらしい。

  • 差止請求(侵害行為を予防するための請求)
  • 損害賠償請求(侵害行為によって受けた損害を賠償させるための請求)
  • 不当利得返還請求(侵害行為によって不当に得た利益を返還させる請求)


このうち,差止請求については侵害行為を未然に防ぐことが目的であるため,そもそも時効は成立しない。よって残りの二つについて。

損害賠償請求


損害賠償請求の消滅時効は以下のように規定されている。

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

http://www.houko.com/00/01/M29/089B.HTM#s3.5


つまり,「著作権侵害行為を知ってから3年」または「不法行為から20年」でその不法行為著作権侵害)に対する損害賠償請求権は消滅する。

不当利得返還請求


次に,不当利得返還請求については以下。

(債権等の消滅時効
第167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

民法


不当利得返還請求権は債権とみなされるので,消滅時効は10年となります。
なお注意点として,損害賠償請求権と不当利得返還請求権は両立しないらしい。片方が成立したらもう片方ではもう訴えられないとか。著作権侵害に対する民事訴訟としては損害賠償請求の方が強いので,不当利得返還請求はだいたい上記の3年の消滅時効をくらってしまってる場合に使うものだとか。


ちなみに消滅時効の起算日ですが,以下でいいのかな?

消滅時効の進行等)
第166条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

民法


実はよくわかってないのだけど(マテ たぶん同人誌を書いたこと自体に対する著作権侵害の各請求権は書き終わった段階から始まるんでないかな? このへんは正直よくわからない。


上記が民事。次に刑事。

刑事の時効


刑事の公訴時効は親告罪非親告罪で違うので著作権法の規定を確認すると,

第123条 第119条、第120条の2第3号及び第4号、第121条の2及び前条第1項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

著作権法


ここから著作権法上であげられている罰則について,同人誌と関係ありそうなものについて親告罪非親告罪をわける。またあとの項と関連するので懲役の期間も付しておく。

  • 親告罪
  • 非親告罪
    • 正しい著作者・原著作者でない者の名前を表示した著作物の頒布→1年以下(121)
    • 著作者または実演家死亡後の,人格権の侵害に準ずる行為→罰金のみ(120,60,101-3)
    • 出所の明示の義務違反→罰金のみ(122)

参考: 著作権法における罰則規定の概要(古い法律に沿ってるので注意)
参考: http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/chosakukenhou_kaisei_4_q10.html(平成18年の改正で罰則が強化されます)


このうち,親告罪については以下の規定が適用される。

第235条 親告罪の告訴は、犯人を知つた日から6箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
1.刑法第176条から第178条まで、第225条若しくは第227条第1項(第225条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第3項の罪又はこれらの罪に係る未遂発につき行う告訴
2.刑法第232条第2項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第230条又は第231条の罪につきその使敏が行う告訴

http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#s2.2


また非親告罪,および犯人が知られなかった親告罪でも,以下の規定により時効が成立する。

第250条 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1.死刑に当たる罪については25年
2.無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
3.長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
4.長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
5.長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
6.長期5年末満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
7.拘留又は科料に当たる罪については1年

http://www.houko.com/00/01/S23/131A.HTM#s2.2


出所明示義務違反や死亡後の人格権侵害,嘘の著者名・原著者名の表示は3年。また現時点では著作権や人格権等の侵害については5年。ただし今度の改正で著作権侵害は10年以下になるので,7月時点で消滅してない場合は7年の時効になる。
罰則強化って,こんなところにも効いてくるんですねえ。

まとめ

で,以上をまとめるとこんな感じ。短いのから順。

(刑事)著作権侵害ほか親告罪 6ヶ月(侵害行為が確認されてから)
(民事)損害賠償請求 3年(侵害行為が確認されてから)
(刑事)出所明示義務違反等 3年
(刑事)人格権侵害,現行の著作権侵害 5年
(刑事)改正後の著作権侵害 7年
(民事)不当利得返還請求 10年
(民事)損害賠償請求 20年


最大でも20年ということは,C31以前に刊行されて,それ以後に再版等をしていない同人誌は訴訟対象外と見てよさそう。まあ累計約32000サークル分なので,現在のコミケの1回分にも満たない量ではあるけれど。

*1:7月施行の改正で10年以下になります